2009年 01月 25日
とある写真家の肖像(インタビュー編) |
約束の場所で待っていると、携帯が鳴った。
「今、何色、着てる?」
「黒です」
「そう、じゃ、そこでくるくる回ってみて」
何のことかと思った。
言われるがまま回ってみる。
渋谷では、ある程度のことは「何でもあり」なのか、誰も訝しがらないし振り返りもしない。
「はい、そのまま交差点を渡って、右に曲がって真っ直ぐ」
到着すると
「もう少し先、屋根の切れたところで上を見上げて」
一分ごとに掛かってくる電話。
「違う、そっちじゃなくて、後ろ向いて。そう…そこで上を見上げる」
あ!
ここからずっと見ていたのね!
まるで身代金受け渡しのミッションめいた電話から、その日のインタビューは始まった。
続きは下の「続く…」をクリックしてください。
とある雑居ビル。
階を数える。
1、2、3、………8階だ。
エレベータで上がって踊り場に。
そこで何が行われていたかというと、渋谷の街、銀座線の往来を、朝早くから独りで撮影していらしたのだ。
9月、渋谷での個展─斬新なコンセプトと今までにない手法、新しい世界観に満ち溢れた「渋谷の街」の写真に魅了された。
さらに昨年末はパリで、そして今年はイタリアでも展開される。
ここはその撮影現場なのだ。
世界をまたにかけた美の世界!
もっと緊張したラディカルな現場かと想像していたのだけれど、いたってリラックスムード。
こんなアバウトな雰囲気、どこにでもあるスナップショットの光景から、あの完成度の高い作品群が出てくるのかと思うと、とても不思議な感覚に包まれた。
この人の頭の中は一体どうなっているのだろう…想像するだけで思考回路がショートしてしまう。
一瞬不安になるんだけど、ふわっと身体が浮き上がるような心地よさがある。
イマージュは無限だ。高い美意識は大きな価値を生む。
さて、その後、カフェでパストラミとカマンベールサンドとカフェラテで朝食を採りながら、お話をお伺いする。
実は前日まで忙しくしていて、まだ新作を見ていなかった。なんたる不覚!
と、iPod touchを取り出して、くるくると新作と、先ごろ個展でも見せていただいた作品を表示してくださった。
iPod touchの操作性の良さ、画像の良さが、作品群のコンテンポラリーな美しさとマッチしている。
こういうプレゼンって、おしゃれだなぁ。やっぱり一流の作家は、プレゼンも一流!と感心しつつ。
さらに掘り下げて、過去に遡って話を聞いてゆく。
作家の思想や哲学は、作品を理解する上で欠かせないと私は思う。
どうやって撮ったか─道具や手法、技法、技術はそれを支える土台や柱に過ぎない。
土台や柱には確かな技術が必要だけれど、私達は土台と柱だけに囲まれて暮らすわけじゃない。
三時間弱に渡るインタビューの結果の考察はこちらでどうぞ。
http://sanalabo.exblog.jp/10134773/
さて、話をしている間も、窓から見えている建物を撮影している。
たまたまその日は冬にしてはうららかな日和だったが、澄み切った空気を刺し貫くような陽射しが、街を形而上絵画の世界に変えていた。
日傘を差している女性が通りかかる。
「夏と冬とでは、まったく光線の強さが違うのかと言うとそうでもないんだよね」と、真夏のうだる暑さの中でも撮影して来た写真家は、虫眼鏡でミクロワールドを探索する少年のような無邪気さで笑った。
「これで一つ、作品ができた♪」
いつまでも子供心を失わない、好奇心旺盛、感性を磨く、常に美意識を高める、妥協しない、作家の条件をすべて満たして、なおかつ貪欲に新しい世界観を確立し、世界に挑戦する姿には感銘を受ける。
学生時代にインスパイアされたジョルジュ・デ・キリコについても話を聞く。
好きなアートや若い頃に目指した方向性。
生い立ちや環境に起因するアイデンティティが、今現在にいたるまで、多くの枝葉を付けながら、天に向かって太い幹を真っ直ぐに伸ばしているのを感じる。
余談だが、私に娘が生まれたら大好きな画家にあやかって「キリコ」と名付けよう、女子学生の頃漠然と抱いていた夢。
写真家の娘さんの名が「キリコ」だと知った時は、とても驚いた。
時間が許せば、味覚、聴覚…もっといろんな切り口からスキャンして、写真家─所幸則氏の持つ五感、さらには第六感に迫りたかった。
また次の機会に譲るとして…。
--------------------
写真家、所幸則氏の『渋谷1sec(ワンセコンド)瞬間と永遠』
http://www.tokoroyukinori.com/
あさって1/27(火)。
photographers summitが開催され、『パリフォトレポート』において。
11月に行なわれた国際的写真フェスタ、世界中のギャラリーや出版社が集まる、まさに写真界のワールドカップとも言える『パリフォト』 での、海外アートシーンの最先端事情を、所さんをはじめ参加したフォトグラファーたちがレポートします!
「今、何色、着てる?」
「黒です」
「そう、じゃ、そこでくるくる回ってみて」
何のことかと思った。
言われるがまま回ってみる。
渋谷では、ある程度のことは「何でもあり」なのか、誰も訝しがらないし振り返りもしない。
「はい、そのまま交差点を渡って、右に曲がって真っ直ぐ」
到着すると
「もう少し先、屋根の切れたところで上を見上げて」
一分ごとに掛かってくる電話。
「違う、そっちじゃなくて、後ろ向いて。そう…そこで上を見上げる」
あ!
ここからずっと見ていたのね!
まるで身代金受け渡しのミッションめいた電話から、その日のインタビューは始まった。
続きは下の「続く…」をクリックしてください。
とある雑居ビル。
階を数える。
1、2、3、………8階だ。
エレベータで上がって踊り場に。
そこで何が行われていたかというと、渋谷の街、銀座線の往来を、朝早くから独りで撮影していらしたのだ。
9月、渋谷での個展─斬新なコンセプトと今までにない手法、新しい世界観に満ち溢れた「渋谷の街」の写真に魅了された。
さらに昨年末はパリで、そして今年はイタリアでも展開される。
ここはその撮影現場なのだ。
世界をまたにかけた美の世界!
もっと緊張したラディカルな現場かと想像していたのだけれど、いたってリラックスムード。
こんなアバウトな雰囲気、どこにでもあるスナップショットの光景から、あの完成度の高い作品群が出てくるのかと思うと、とても不思議な感覚に包まれた。
この人の頭の中は一体どうなっているのだろう…想像するだけで思考回路がショートしてしまう。
一瞬不安になるんだけど、ふわっと身体が浮き上がるような心地よさがある。
イマージュは無限だ。高い美意識は大きな価値を生む。
さて、その後、カフェでパストラミとカマンベールサンドとカフェラテで朝食を採りながら、お話をお伺いする。
実は前日まで忙しくしていて、まだ新作を見ていなかった。なんたる不覚!
と、iPod touchを取り出して、くるくると新作と、先ごろ個展でも見せていただいた作品を表示してくださった。
iPod touchの操作性の良さ、画像の良さが、作品群のコンテンポラリーな美しさとマッチしている。
こういうプレゼンって、おしゃれだなぁ。やっぱり一流の作家は、プレゼンも一流!と感心しつつ。
さらに掘り下げて、過去に遡って話を聞いてゆく。
作家の思想や哲学は、作品を理解する上で欠かせないと私は思う。
どうやって撮ったか─道具や手法、技法、技術はそれを支える土台や柱に過ぎない。
土台や柱には確かな技術が必要だけれど、私達は土台と柱だけに囲まれて暮らすわけじゃない。
三時間弱に渡るインタビューの結果の考察はこちらでどうぞ。
http://sanalabo.exblog.jp/10134773/
さて、話をしている間も、窓から見えている建物を撮影している。
たまたまその日は冬にしてはうららかな日和だったが、澄み切った空気を刺し貫くような陽射しが、街を形而上絵画の世界に変えていた。
日傘を差している女性が通りかかる。
「夏と冬とでは、まったく光線の強さが違うのかと言うとそうでもないんだよね」と、真夏のうだる暑さの中でも撮影して来た写真家は、虫眼鏡でミクロワールドを探索する少年のような無邪気さで笑った。
「これで一つ、作品ができた♪」
いつまでも子供心を失わない、好奇心旺盛、感性を磨く、常に美意識を高める、妥協しない、作家の条件をすべて満たして、なおかつ貪欲に新しい世界観を確立し、世界に挑戦する姿には感銘を受ける。
学生時代にインスパイアされたジョルジュ・デ・キリコについても話を聞く。
好きなアートや若い頃に目指した方向性。
生い立ちや環境に起因するアイデンティティが、今現在にいたるまで、多くの枝葉を付けながら、天に向かって太い幹を真っ直ぐに伸ばしているのを感じる。
余談だが、私に娘が生まれたら大好きな画家にあやかって「キリコ」と名付けよう、女子学生の頃漠然と抱いていた夢。
写真家の娘さんの名が「キリコ」だと知った時は、とても驚いた。
時間が許せば、味覚、聴覚…もっといろんな切り口からスキャンして、写真家─所幸則氏の持つ五感、さらには第六感に迫りたかった。
また次の機会に譲るとして…。
--------------------
写真家、所幸則氏の『渋谷1sec(ワンセコンド)瞬間と永遠』
http://www.tokoroyukinori.com/
あさって1/27(火)。
photographers summitが開催され、『パリフォトレポート』において。
11月に行なわれた国際的写真フェスタ、世界中のギャラリーや出版社が集まる、まさに写真界のワールドカップとも言える『パリフォト』 での、海外アートシーンの最先端事情を、所さんをはじめ参加したフォトグラファーたちがレポートします!
by sana_labo
| 2009-01-25 13:17